認知症のばあちゃんが創る未来
2018.02.26
ばあちゃんのSOS
このプロジェクトは、ばあちゃんのSOSから始まりました。
物忘れが始まったことを自覚し、保健師の私に相談をしてきました。
時を同じくして、ばあちゃんと同居していた両親が、ばあちゃんが同じことを繰り返し話すことや注意しても居直ることなどに対して苛立ちを感じ始めていたのです。
受診を勧め、医療機関を受診したばあちゃんの診断は「初期認知症」でした。
しかし、ばあちゃんは自分を責めているように感じる両親に対してこの診断を受けたことも、内服を開始したことも知らせませんでした。何もわからない両親の言動は変わることはなく、ばあちゃんは家族の中で孤立にも似た感情を抱くようになったのです。
私の家だけではなかった
保健師として地域を歩く中で「うちのばあちゃん(じいちゃん)もおかしいよ」という声をたくさん耳にしました。悩んでいる人が多いことに気付き、これは社会全体の問題であるとわかったのです。
「どう接したらいいの?」
家族やご近所の人が「どう接したらいいの?」と悩んでいる声も多くありました。
世間では「認知症の人にやさしい社会を」と言われます。しかしながら、認知症になったことのない私たちは、真に寄り添うことができるとは思えません。
認知症を知らない両親がうまく接することができなかったのはもちろん、認知症を勉強した私でもばあちゃんにとって良い接し方ができていたかは分かりません。
だから、体験する。
認知症はこの超高齢社会に生きている以上、0歳でも100歳でもみんなに関連することです。
しかし、認知症を体験することは現実世界では難しいことです。VRを用いた体験会を行うことによって、現在認知症に直面していない人が将来へ向けた準備をすることができたり、認知症に直面している人も関わり方を見直すことができると思います。
目指すのは「人として、ありのままに関わり合える地域」
認知症を患うと「認知症の人」と呼ばれることがよくあります。これは違います。「人」が認知症になっただけのことです。認知症を患うと周囲が「何もできなくなった」と決めつけ、人としての機能を奪おうとします。
でも、認知症を患ってもできることがたくさんあります。ばあちゃんは料理もするし、田畑にも出ます。牛の世話もするし、外出もします。
ばあちゃんが人として生きてきたこの約80年の人生を、私はこの地域でできることに精一杯取り組んで生き抜いてほしいなと思います。
認知症のばあちゃんが創る未来を、皆さんも応援してください!
残りわずかな日数となりました。ご支援よろしくお願いします。